シンガポールに来て、初めての年末を迎えています。こっちは12月も常夏ですので、年末になったという実感が沸きにくいですが、総括しようと思います。今年は、インキュベイトファントして、私個人として、多く達成できた年でもあり、また辛いこともあり、来年以降の課題も多く見つかった年でした。
1)ファンドのスーパーパフォーマンスが出た
自分が個人で運用するファンド(コアピープルファンド)が今年で6年目を終了しましたが、今年で出資元本に対して7倍以上のリターンが上がりました。次に2010年に組成した、4名の仲間で運用するインキュベイトファンド1号も、今年、設立後2年半で元本を回収し、これから更なるリターンの向上を狙える状況になりました。そして、現在クロージング中のインキュベイトファンド2号ファンドも、村田を中心にまとめあげており、ファースクロージングを終えて、既に新しいスタートアップへ組み入れを開始しております。リーマンショック後、これだけの短期間で複数ファンドのリターンがきちんと上げられているチームはあまりないと思うので、個人としてもインキュベイトファンドとしても、パフォーマンス面で非常に自信がつきました。これは大きな収穫だったと思います。
2)自身が創業し初代の代表取締役を勤めたポケラボ社の大型資本提携
私自身はベンチャーキャピタル・投資家を自分の職業としており、起業家・経営者を支援することが仕事ではあるのですが、ポケラボ社の場合は少し変わっていて、自分自身が会社を設立し、現ファンドメンバーの和田と共に初代の代表取締役を勤めた後、創業経営者を外部から募集してスタートした企業です。今年、会社のグローバル戦略に合わせてGREE社との資本提携が実現し、スマフォ×グローバルとして、次のステージにつなげたことが、大きな出来事でした。両社の提携の内容も素晴らしく、今後のベンチャー企業の資本提携のお手本となるような形になるだろうと思っておりますし、また140億円という資本提携の規模も、ネット業界では最大規模であったことも、業界にいい影響を与えた事象だったと思っています。私は、取締役・創業投資家としての自分の役目を終えて、今は、新しい環境の下、私のジャフコの後輩で代表取締役の前田さん、創業経営者の後藤さん・佐々木さん、ヒットメーカーの鈴木さん、脂の乗ったマネジメントの吉弘さん、若くて優秀な、伸びしろのあるメンバーが経営をしています。来年は、日本発、世界に通用する会社として、大きく勝負して欲しいと思います。
3)アジアからの挑戦開始
話は飛びますが、投資家として、これから日本を背負っていくような企業を創造していこうと考えていくと、私は、スタートアップにもグローバルな視野は欠かせないと思っています。インキュベイトファンドも、日本から世界に通用するようなベンチャー企業を生み出すべく頑張っている訳ですが、ファンドの代表パートナーとして、幅広い視野とネットワークを作る為に、アジアのハブであるシンガポールへの移住を決断しました。シンガポールがベストかどうかはやりながら考えていきたいと思っていますが、日本から(日本人として)世界を狙って行きたい起業家に、市場の視点とチャネルを提供し、より高い付加価値を与えられるよう、一歩を踏み出しました。また、今回の決断は、gumi社と嫁さんの会社であったコントロールプラス社の事業譲渡が成立したことも大きいです。国光さんがさすがの爆速の意思決定をしてくれました。その判断は正しくて、実際、両社の提携は今もうまく機能しており、コントロールラスのメンバーがgumi社内でデザイナーチームを中心に非常に活躍しています。これもM&A後の組織統合がうまくいった好例ではないかと思います。また、gumi社自体、私が4年半前に投資した時、社員は国光さん含めて3名でしたが、今は海外支社含めて500名近くの組織に成長しました(トーマツの日本テクノロジーFast50で1位!)。驚くべき成長です。海外へ本気で攻めるベンチャーとして先を突っ走っています。
4)インキュベイトキャンプという場をきっかけに、10社以上の会社が産まれる
年に2回開催している、起業家と投資家の新規事業創造合宿、第3回、第4回のインキュベイトキャンプが、無事開催されました。その場をきっかけに10社以上の新しい企業が設立され、投資を受けたり、サービスをリリース・強化することが出来ました。我々としては、単なるビジネスコンテストでもなく、レクチャーイベントでもない、起業家と投資家のガチンコ勝負を実現する為の重要なインフラとして、キャンプを位置づけています。合宿当日は、業界を代表する経営者や起業家、投資家の方に徹夜でメンタリング頂き、そしてアフターセッションでも、国内外から先輩経営者や投資家によるクローズドなレクチャーセッションを10回近く開催しています。本当に多くの人に支えられ、運営されている、業界の知恵と汗が結集したイベントです。それ故に、我々もインキュベイトキャンプを、日本中の力が余っている若者が起業したい・何かしたい、と思う時の登竜門のようなイベントにできれば、というのが、目下の目標です。
5)そして、何よりも起業家と共に過ごした時間
インキュベイトファンドのメンバーは皆、投資させてもらった起業家・経営者と毎週毎週、定例のミーティングを行っています。この毎週の定例ミーティングが、インキュベイトファンドの、支援スタイルの特徴の一つであり、(ちょっと気持ち悪いかもしれませんが)投資家として至福の時間です。これを今年も無事1年間行うことができたことが、最大の達成事項に他なりません。我々メンバー全員、この時間をこれから何年も続けて行きたいと思っています。プロである以上結果は大事である前提ですが、期待に胸ふるわせることも、サービスがうまくいかず苦しいことも、そのプロセスを、その時間を、起業家・経営者と共に過ごせることが、投資家としても一個人としても、大きいのだと感じています。
他に、インキュベイトファンドとしては、ゲーム分野では、Aiming社、アクセルマーク社という大型の投資先もありますし、私が直接関わっている投資先企業で、今年事業を本格スタートし億単位の調達に成功した、MUGENUP社、経営陣のオペレーションエクセレンスが光るみんなのウェディング社、トランザクションの伸びが著しいチケットストリート社、スマートフォンコマースで大きなチャレンジをするORIGAMI社等々、今進行中の大きな増資や提携、そして新しいイノベーションを作り出すべく、サービスリリースを控えている企業が多数あります。
2013年、起業家・経営者と良い時間も辛い時間も一緒に過ごす。そして、一緒に成長したい。こう思っています。起業家・経営者にとっての名将、優勝請負人と目指して、来年も頑張るぞー!!
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