先日、アジア各国のベンチャーキャピタル(VC)やプライベートエクイティ(PE)、そして機関投資家が集まる、Asian Venture Capital Forumに登壇する機会があった。グロービスの高宮さん、東京大学エッジキャピタルの郷冶さんと一緒のセッションで、『Venture Capital opportunities in Japan and beyond』というテーマだった。IPO数の減少、年間のVC投資総額が800億円に落ち込むなど、暗い話が多いが、僕個人としては、以下の話をした。
・日本はコンシューマ向けインターネット分野がまだまだ伸びると思うこと
・Eコマースやゲーム含め、ユーザ数で比較すると、日本市場は中国市場や北米と比べると見劣りするが、1ユーザ当たりのライフタイムバリューや、ARPU(Average revenue per user)、そしてユーザのサービスに対するロイヤリティは、中国等の新興国に比べて高いので、そこを評価するべきだということ
・日本のベンチャー市場は、Groupon、Facebook、Zyngaのように、会社のバリュエーションが、未公開の段階でインフレすることはない。仮に今直面している欧州危機や北米のテックバブルがはじけたとしても、日本のベンチャー市場がバリュエーション面で大きく影響を受ける程度は少ない。金融市場とシンクロしないという点でオルタナティブ投資としては非常に健全なマーケットであるし、確率からしても投資リスクも低いということ
しかしながら一方で、課題も多い。IPOは細っているし、M&Aも北米ほど活発ではない。また、創業期の数百万円から一千万円を出す投資家はそれなりにいるとしても、本格的に事業展開する上で、シリーズA以降の成長ステージにおいて、数千万円、数億円、数十億円を投資するプレイヤが少ないことや、出口においてのれん代の償却等、M&Aのバリューが上がりにくい構造にあること等が、課題として挙がった。
VCのセッション以外も聞いてみたが、機関投資家の方の話やPEのセッションはもう少しトーンが暗く、日本のPE市場は1990年代後半から2005年くらいまでは案件が十分に存在する構造にはあったが、それ以降案件もなくなってきている。またリーマンショックにより市場が完全にスタックしてしまっていて、Debtをつけられない、投資先の破たん等、PEファンドにとって状況は厳しい。ファンドの延長を求めるプレイヤも多い、といったこと等、議論されていた。
ベンチャー市場の中にいて、毎日決して楽な状況ではないが、リーマンショックというものを仕事の中で感じることは少なかった。リーマンショックがあろうがなかろうが、ネット、モバイル、ソーシャルといったイノベーションは起き続ける。
その期間においても、ベンチャー業界においては、投資したgumiやポケラボのような企業は伸び続けたし、ソーシャルゲームといった産業も産まれている。3年前に投資した時には3人しかいなかった両社は、今では100名近い社員を抱える企業まで成長した。
そもそも、VC、PEそして不動産のような投資は、株式や債券のような金融市場に影響を受けない投資として、代替投資(Alternative investment)と呼ばれる。所謂毎日の株価に一喜一憂するマネーゲームではなく、実産業への直接投資する長期投資である。
中でも、借入によるレバレッジを多用する不動産投資やPE投資と違って、ベンチャー投資は、投資する資金を機関投資家や事業会社及び個人から募り、それを新しい産業、新しい企業、そしてチャレンジする人に投資し、事業を育成してリターンを出す。それだけだ。金融市場からの影響は少ない。技術の進歩、人のアイデア、人間の挑戦、といった人間の営みやイノベーションがある限り、成功者はリターンを出せる構造にある。
そういった意味でも、真の代替投資はベンチャー投資だけと言えるのかもしれない。偉そうに書いたが、最近本当にそのような気がしてきている。
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