最近、個人的興味として、イノベーションを研究しています。イノベーションは使い尽くされた言葉ではありますが、日々の投資育成活動の中で、この概念は、益々重要度を増していっているように感じています。
今更か、とも言われそうですが、「イノベーションの解」というクリステンセン教授の本を読んでいます。「イノベーションのジレンマ」をいう本が非常に有名ですが、この本はその続編です。
イノベーションの解では、大企業が社内の中核事業へ資源配分を傾斜してしまうという真っ当な選択が、外部の破壊的イノベーションを招き、それに負けてしまう、というジレンマをどう解決するか、というところに焦点が当たっています。
クリステンセン教授は、外部の破壊的イノベーションが特定できる場合、それを新規事業機会と捉えるのではなく、中核事業への脅威と捉えた時、大企業はその破壊的イノベーションへのリアクションを取り易い、と述べています。そして、中核事業への脅威であるが故に、社内資源をそこに注入しなくてはいけない、というロジックが、大企業のマネジメントを動かす、と考えています。
そして、一度社内資源がその破壊的イノベーション(或いはそのリアクション)へ配分されることが決まったら、そのイノベーションを既存の中核事業の顧客ではなく、その他の顧客や新しいチャネルを拡大して育てていく、ということも重要な用件に挙げています。
これを読んで、私はびっくりしました。
なぜかと言うと、そのプロセスは弊社投資先で成功している、大企業のスピンアウトの企業の設立過程と全く同じだったからです。
その会社は、ある大企業において、インターネットによって、従来の中核事業が立ち行かなくなるのではないか、という危機論がきっかけで始まったプロジェクトからスタートした会社です。つまり中核企業への脅威、がきっかけとなっています。
中核事業への脅威ということで、そのプロジェクトへ資金が提供され、優秀な人材がそれを担当することが許されました。その後プロジェクトは、会社として立ち上がり、我々のような会社から外部資金を調達しました。従来の大企業の社内の枠に捕われないオペレーション形態が確立していったのです。
そして、その大企業の中核事業を離れてビジネスを行い、急成長しています。大企業の中核事業の既存の顧客をターゲットとせず、既存のチャネルを使わず。
この事例は、一般的に考えられている大企業の新規事業の設立、成長の過程とはかなり違っています。しかし、成功しているのも事実です。実は、弊社の投資先企業には、似た事例が他に2つあり、社内でも何度か、なぜそれらの企業が成功しているのか、成功の要因を抽出できるか、議論したことがありました。
イノベーションの解、の解釈は、そんな疑問を晴らす可能性を持った発想でした。
個人的には目から鱗がとれた本であり、VCやPEといった外部資本を使う意義、が見えてきたようで大変うれしく思いました。
もっと大企業からのイノベーションも研究していきたいと思います。
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