ピーターティールの最難関プログラムについての本、「20 under 20 答えがない難問に挑むシリコンバレーの人々」を読む。フェースブックへの初期投資家として有名なピーターティールの財団「ティールファウンデーション」が実施する、20歳以下の若者に、大学をやめて起業するための資金10万ドルを提供するプログラムについての本である。
2011年にスタートしたプログラムであるが、商売がらその動向に興味があったが、ウェブ上にあまりまとまった情報もなかったので、状況を掴むのに役立った。
プログラム内容とは、
”20 アンダー 20 は「 20 歳 未満 の 20 人」 という 意味 で、 ティール・フェローシップ が 出発 し た とき の プログラム の 名前 だっ た。 この フェローシップ は 受給 者 が 大学 を 2 年間 ドロップ アウト する 必要 が ある こと が 独特 だっ た。 この 条件 は その後 やや 緩め られ、 年齢 は 22 歳 未満、 ドロップ アウト 期間 も 1 年 に 短縮 さ れ て いる。 しかし「 大学 に 行か ず に シリコンバレー で 起業 する」する」 という 点 は 変わっ て い ない。 この 返済 不要 の 奨学金 制度 は ピーター・ティール の 個人 プロジェクト で、 運営 経費 も 含め て すべて の 資金 は ティールファンド から 出 て いる”
アレクサンドラ・ウルフ. 20 under 20 日経BP社. Kindle 版.
このプログラムの前提として、何のために大学にいくのか、大学に行く意義や是非という点である。これは少なからず日本でも議論されることもあるが、特にアメリカでは、それに加え、大学の学費が非常に高く、その奨学金を返済するのが大変である、という社会状況がある。
”ティールは大学教育が「ポリティカルコレクトネス」という考え方を広める手段として、強く批判していた。ティールは、普通なら4年制大学に進学するはずの優秀な高校生グループを集めて、いち早く実生活を経験させることにより、大学教育というモデルが時代遅れのものになっていることを証明しようとしていた”
小惑星の採鉱を夢見る少年や、不老長寿の研究をやる少女、オープンソースの分光計を考える等、多様な科学的チャレンジに意欲を燃やした若者が、競争を勝ち抜いてフェローに選ばれる。
その中にはシリコンバレーという地がフィットし、実際に会社を作り資金調達を行い、とベンチャー成長の起動にのれる子もいるが、結果うまく馴染めない子も出てくる。
印象的だったのは、ジョン・バーナムという17歳で小惑星の採鉱というアイデアでフェローになった天才少年。小惑星について小さい頃から調べ続けてきた少年が、フィンテックのベンチャーを起こし、その後シリコンバレーの雰囲気になじめずに、最後は、故郷の大学に戻っていく。彼は会社の価値を大きくしてく、というシリコンバレーの一律のカルチャーに違和感を感じたからである。
”バーナム は、 シリコンバレー の 住人 の 目的 は 天文学 的 な 評価額 の 会社 を つくる こと だけなのでは ない かと 疑い 始め て い た。 しかし 天文学 的 評価額 を 得る という のは、 バーナム の 能力 の 有無 とは 別 の 事情 による もの だ。
若者を対象としている、ということで、かなりプログラムも、本人の自由度にまかせ、無理に起業を推奨している訳ではないと思うが、やはり多少は強引なカルチャーに戸惑う若者もいるだろう。研究者の方がゆっくりと時を進めることができる可能性もある。
フェロープログラムの責任者は、過去数年間のプログラムの実績として、以下のように総括する。
”ドロップアウトはほかの人と違ったコースかもしれないが、失敗者と考えられなくなったのは良いことだ。最初の20人のフェローたちは他の大勢の若者の生き方に素晴らしい影響を与えた。特にアメリカでは、禁止的なまでに学費の負担が大きいために影響は大きかった。フェローたちは大学が成功するための唯一の道ではないことを証明した”
今後、何か自らイニシアチブをとって物事を進めていく大きな手段の一つとして、若いうちから起業を考える人が増えていくだろうことを考えると、改めてどういった選択肢があり得るのか、考えて見たい。
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