短い滞在ではあったが、先週サンフランシスコ、シリコンバレー近辺のスタートアップ企業を複数社訪問した。この二年間は半年に一度程北米の出張を行っているが、現地の情報収集と共に、我々ファンドの今後の戦略や現状の共有といった、インキュベイトファンドのオフサイト合宿の意味合いを持っている。又、今回はファンドのメンバーのみで出張を行ったが、その時のテーマに合わせて、投資先企業の経営陣と一緒に行くことも多く、一緒に市場のトレンドを学び、戦略を議論したりする。
今回はサンフランシスコ、シリコンバレーもインキュベーションブームということで、各地でスタートアップイベントが活発に行われており、起業家が集まるインキュベーション施設も一杯であった。各所で若い起業家が事業計画やデモのピッチを行い、お互い意見交換をしたり、批評したり、そして名刺交換したり、とワイワイガヤガヤやっている。地元のベンチャーキャピタリストに聞いたところ、シリコンバレーバンクという地元専門の銀行の口座の開設数は今年の8月に過去最高となったそうだ。2000年のITバブルの頃よりも多いとのことで、当時記憶を知る私としては当時以上のスタートアップが起業しているという、その事実に驚いた。
Ycombinator等から資金調達している起業家とも話をしたが、彼も初期の事業資金を受けて事業を軌道に乗せることやネットワーク作りが今は非常にやり易く、恵まれている環境だと言っていた。元々起業へのサポート体制の厚かったシリコンバレーやサンフランシスコでも、より起業しやすい環境が整っていると言える。インキュベーターも各種起業家サポートの為のプログラムを3カ月毎に行う等、積極的だ。
しかし一方で、起業はしやすくなって、誰もが自分の夢に向かって自由にチャレンジできる、恵まれている環境が整っているものの、そこからシリコンバレーにある大手のベンチャーキャピタルから出資を受けて、メジャーデビューし更なる事業拡大をしていくことは、また違ったハードルがある。そこはそこで、良い経営チームには資金が集中し、そうでないチームは資金が集まらない現状がある。大手のベンチャーキャピタルであってもしのぎを削って、一流の経営チームに投資をするべく案件を競って投資を行っている実情がある。
日本においてもシリコンバレー同様、起業環境は整ってきてはいる。誰もが自由に自分の夢にチャレンジできる素晴らしい時期だと思う。しかしながら本当の勝負はそこからで、起業してからが、その経営者の真価が問われる、本当の勝負が始まる。
サンフランシスコも、シリコンバレーも、東京も、実はつながっている。市場、アイデアや技術、そしてビジネスモデルといったものは、こちらも向こうも似たようなところを狙っているし、国境を越えて製品やサービスがリリースされる。こちらが意図しなくても海外との競争に巻き込まれる機会は増えるだろう。そして日本もシリコンバレーも起業し一流の企業を作るプロセスは同じである。起業をするのは第一歩であり、そこからサービスをリリースしユーザの支持を受け、良い経営チームを築き、投資家と一緒に会社を拡大させていく。
これをいかに速く遠くまで行うことができるのか。
突き抜けるように青空の中、まぶしい太陽が降り注ぐシリコンバレーを歩きながら、こんな秋晴れの中、前向きにチャレンジする起業家、エンジェル投資家、そして一流のチームへの投資を行うべく競争するベンチャーキャピタル、それぞれが人生をかけて必死にやっていることに、そして世界を変えるべく夢に向かっていることに、何かすがすがしい気持ち良さを感じた。
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