昨年アマゾンに買収された、靴のECサイトのZappos。
経営手法がユニークであり、また従来コストセンターと見られがちな“カスタマーサポート”をビジネスのコアに置いている点が、今後のビジネスの進化系を見ているような気がするので、気になっていた。
そのCEOであるTony Hsiehが書いた本が『Delivering Happiness』である。彼の起業から今までのストーリーを回顧して書いた本である。
事業面、経営戦略面で参考になりそうなポイントは、以下の点である。言っていることは全うなことばかりであるが、愚直にそれを追及した結果がZapposの成功を導いているように感じた。
・起業家かCEOが最も大事な決定の一つは、どの市場で事業をするか、である。
・Zapposのビジネスが有望と判断した理由(彼は創業したLinkshareをマイクロソフトに2億6500万ドルで売却した後、投資家としてZapposに関わりその後CEOとなっている)は、米国では靴が紙のカタログで売れていたこと(それをウェブで販売すればよい)、市場が巨大であったこと。
・初期から経営的に3つの分野に注力した。①カスタマーサービス、②企業文化、③従業員教育。これら3つが結果として中長期的な事業の競争力につながった。
・初めは在庫管理(Inventory)を他社にアウトソースした。これを見直すことが大きな転機となる。コアコンピタンスは絶対にアウトソースしてはいけない。ここのデリバリーが早ければ、顧客に“WOW”な体験をさせることが出来る。
・成長のスピードは速い。売上の伸びは、
1999年ゼロ
2000年160万ドル
2001年860万ドル
2002年3200万ドル
2008年10億ドル以上、と拡大している。
しかしながら、これ以上にZappos及びTony Hsiehが優れているのは、経営者の大胆な決断という点、徹底に追及する点であろう。一旦、カスタマーサービスを事業の中核にする決断をしてから、彼がとった施策は徹底している。このような決断をどのくらいの経営者がやれるだろうか。
・カスタマーサービスにおいて、リピートカスタマー、口コミが最も大事。365日の返品OK、24時間365日のコールセンター、フリーダイヤル、を実施。コールセンターはコールタイムを計らない、アップセルもしない。効率よりも顧客に提供する経験を最大化することを重視している。在庫がない場合は、他社のウェブサイトを3つ以上探して、それを顧客に教える。
・カスタマーセンター強化の為、サンフランシスコからラスベガス(930キロ離れている)へ本社を移転する。社員数は90名いた。
・赤字の状況であったが、在庫リスクのないドロップシッピングの事業モデルから在庫を持つ事業へ転換し、顧客へのデリバリーのスピード、満足度を優先させた。
以上、あたりが読んでいて気になったポイント。
その他、個人的には、IPOではなく、Amazonへの売却をした理由は、Sequoia Capital含め、投資家が望んだから。会社を経営する上で、顧客や従業員だけでなく、投資家との“Alignment(協調)”が大切。AmazonはSequoia Capitalのマークモリッツの紹介。Amazonは現金で100%買収を望んだが、Zappos側が売るのではなく、会社を一緒に伸ばしたいという意向から株式交換となった、あたりの流れは参考になった。
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