前回からの続きで、技術ベンチャーの成功と大手の購買構造について、大手企業と技術ベンチャー企業との関係について、述べてみたいと思う。
大手の購買構造とは、大手企業がどのような外部調達をする傾向があるか、ということである。ちょっとそれっぽく言うと、コンサルタントやIT企業が言うところの、エコシステム、というものに関連がある。本来生態系を指すことばであるが、ビジネスの世界では、ある業界の事業構造、流通構造、購買調達構造、みたいなことを指す言葉だと理解している。僕の知る限り、これを意識して技術マネジメントをを考えている企業の代表格はIBMである。
米国の事例を見ると、通信であれ、半導体であれ、ソフトウェアであれ、米国の大手企業(といっても若い企業もあるが)がベンチャー企業の製品をきちんと評価し購買しているように思う。ある製品ができたとき、一番初めに買ってくれるお客がそこに存在するのである。結果としてベンチャー企業は成長していく。つまりベンチャー企業の身近にお客がいて、ベンチャー企業の製品やサービスを購買してくれている、ということである。このような状況は、買う側も良い製品をいち早く手に入れて差別化したい、成長したい、という思いがあるし、ベンチャー企業もその企業に採用されたら、大きく跳ねるチャンスがある。生態系、エコシステムがそこにはあるのである。
一方、日本の大手を考えてみると、外部調達は外の良いものを手に入れて競争力をつけていく、というよりも、自分達で考えたものを、下請けとして発注する、という形に近いことが多い。お互いが成長する為に協力しあうような関係にはない。結果として、エコシステムで考えると、大手の方針に依存したような会社しか生まれいし、その意向に100%沿わない企業は、キャッシュが続かず死んでしまう。
その一方で、米国のベンチャーが作ったような製品は、結構購買する傾向にあり、彼らを下請けとして使う、という扱いをすることはなく、逆に全てのカスタマイズのコストやサポートのコストを被ったりする。生産能力や品質といった審査も日本企業へのそれよりはずっと甘い。
もちろん日米のベンチャーの狙うコンセプトやカテゴリーが違うのは確かであるが、技術のベンチャーを作り上げる為の方法論云々は、結局突き詰めると、マネジメント能力や技術コンセプトという議論よりは、顧客(つまり主に大手企業)と技術ベンチャー間の購買構造にある、と言ってもいいくらい、非常に重要な問題である。ここさえ良い関係になれば、売上がたつ、お金がつく、良い人材が流れる、という循環になり、技術ベンチャーにまつわる育成の難しさは低減する。
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